交通事故時の労災保険の利用に関して

通勤途中に交通事故に遭った場合、労災保険が利用できるケースがあります。労災保険とは、正式名称を「労働者災害補償保険」といい、労働者が仕事中や通勤中に事故に遭ってしまった場合に、金銭の給付による補償をしてくれる保険制度のことです。たとえば、勤務中に社用車を運転していたところで交通事故に遭ったのであれば、労働中の事故となり、労災保険の補償金を請求でいるのです。今回は、交通事故時の労災保険の利用に関して詳しくご説明します。

交通事故で労災保険の給付を請求する場合

では、勤務中の交通事故が理由で労災保険の給付を請求する場合、どのような手続きが必要なのでしょう?まずは、労働基準監督署に「第三者行為災害届」を提出し、保険金の給付を請求します。ここで労災保険の給付対象の交通事故だと認められれば、保険金が給付されます。労災保険の利用は、それほど難しい手続きは必要ないので利用しない手はありません。ここで重要になるのは、勤務中や通勤時の交通事故であるという事実です。

給付される保険金の内容について

具体的にどういった内容の保険金が給付されるかというと、負傷時の治療費(労災指定の医師の診察であれば治療費の自己負担分は発生しません)、仕事の休業によって減った収入を補填する休業補償、後遺障害になった場合の障害補償、治療が長引いてしまった場合の傷病補償年金、死亡してしまった場合の遺族補償年金や葬祭料など、さまざまな保険金が給付されます。

ただし、休業補償や遺族補償年金の算定には、対象となった労働者が負傷する前(死亡する前)の賃金が基準になる点に注意です。具体的には、通勤前の交通事故で1か月間入院したのであれば、1ヵ月分の平均賃金相当額の約6割(休業特別支給金を上乗せすれば、約8割)が支払われます。

二重で保険金は受け取れない

交通事故にて補償されるのは、労災保険だけではなく自賠責保険もあります。そして、自賠責保険と労災保険とでは、支給内容で重複している部分があるのです。もし、同時に利用できる状況下であったとしても、同じ名目にて二重で保険金を受け取ることはできない点に注意しましょう。

すなわち、労災保険からの保険給付が自賠責保険からの保険給付よりも先に行われた場合、被害者は、同じ名目で自賠責保険に対して保険金を請求することができなくなります。他方で、自賠責保険からの保険給付が労災保険からの保険給付よりも先に支払われた場合、被害者は、同じ名目で労災保険に対して保険金を請求することができなくなります。

なお、後者の場合で、労災保険の保険給付が年金で支給されるものについては、支払われた自賠責保険の保険給付額に達するまでその支給が停止されることになります(ただし、この支給停止は、災害発生後3年(平成25年4月1日以降の交通事故の場合は、7年間)を経過したときは、たとえ支払われた自賠責保険の保険給付額に達していなくても終了し、年金の保険給付が開始されます。)。