過失割合の修正要素には何があるのか?

交通事故の被害に遭った場合に、保険会社の担当者から過失割合の話がされることがあると思います。過失割合とは、当事者の不注意や過失が交通事故の発生にどの程度影響していたのかという、当事者間での事故に対する責任の割合をいいます。

交通事故被害に遭ってしまった場合には、治療費、後遺障害が残ったことに対する慰謝料、逸失利益などの人身損害と車両の修理費用や代車使用料などの物的損害が生じる可能性がありますが、最終的に加害者に対して、請求できる損害額は、損害額全体から自己の過失割合分を差し引いた金額になります

交通事故の損害賠償実務において、過失割合の判断にあたっては、事故態様に応じて過失割合の目安を示した別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」が参考とされています。別冊判例タイムズ38号では、事故類型ごとの基本的な過失割合を示すとともに、個々の事故類型ごとに適用すべき修正要素について記載しています。

以下では、過失割合の修正要素について、どのようなものがあるかについて解説していきます。

著しい過失と重過失

別冊判例タイムズ38号では、事故類型ごとに通常想定される過失を考慮して、基本的な過失割合が定められています。

例えば、信号機の設置された交差点において、共に青信号にしたがって、交差点に進入した直進車と対向車線からの右折車が衝突した事故の基本的な過失割合は、直進車:右折車=20:80とされています(【107】図)。交差点においては、右折車よりも、直進車の進行が優先されますが、道路交通法第36条第4項では、車両等が交差点に進入する際には、安全な速度と方法で進行しなければならないと定められており、事故の発生には、直進車にも前方不注意、ハンドル・ブレーキ操作の不適切等何らかの過失があったと考えられます。そのため、直進車には、通常の過失として、2割の過失が認められているのです。

そして、修正要素としてよく取り上げられるのが、通常の過失として評価されていない「著しい過失」と「重過失」です。

著しい過失」とは、事故態様ごとに通常想定された程度を超える過失をいい、一般車両の場合の具体例としては、わき見運転等の著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等を使用したり、カーナビゲーション等の画面を注視しながら運転すること、おおむね時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転等が挙げられます。

そして、「重過失」とは、著しい過失よりもさらに程度の重い、故意に比肩するような重大な過失をいい、一般車両の場合の具体例としては、居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、おおむね30km以上の速度違反、過労、病気及び薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある場合が挙げられます。

交通事故当事者に、「著しい過失」や「重過失」に該当するような事情があった場合、その当事者の過失割合を1割から2割重く修正することとなります

先ほどの例でいえば、直進車の運転手がカーナビゲーションを見ていた場合には、直進車に著しい過失があるものとして、直進車の過失割合が1割重く修正され、過失割合は、直進車:右折車=30:70となります。

また、上述の「著しい過失」や「重過失」の具体例は主に、事故当事者が、四輪車や単車の場合の内容であり、事故当事者が自転車の場合は異なります

自転車の「著しい過失」の具体例としては、酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘をさすなどしてされた片手運転、脇見運転等の著しい前方不注視、携帯電話等を使用したり、カーナビゲーション等の画面を注視しながら運転すること等が挙げられ、「重過失」の具体例としては、酒酔い運転、いわゆる「ピスト」等の制動装置不良等が挙げられます。

そして、「著しい過失」と「重過失」以外の修正要素は、事故類型ごとに個別に定められています。例えば、先ほどの信号機の設置された交差点において、共に青信号にしたがって、交差点に進入した直進車と対向車線からの右折車が衝突した事故の場合には、右折車が、合図をしていないことや、徐行をしていないことは、右折車の過失割合を1割重く修正する要素となっています。

このように、過失割合の修正要素には、「著しい過失」と「重過失」という事故当事者ごとに想定される要素に加え、事故類型ごとに想定される要素があります。

交通事故の示談交渉にあたっては、弁護士に相談を!

以上では、過失割合の修正要素について解説しましたが、適切な過失割合を決定するにあたっては、事故ごとの個別事情を検討することが必要となります。

弁護士にご依頼いただいた場合、加害者加入の保険会社との交渉一切を引きうけ、当該事故の具体的な態様を踏まえ、適切な過失割合での示談交渉を行うことができます。

交通事故の被害に遭われたら、まずは、弁護士にご相談ください。