下肢機能障害が後遺障害として認定される条件
「交通事故で負った骨折は治ったはずだが、以前のように歩けない」「手術後、以前よりも膝の動きが悪くなった」など、下肢(かし)に傷害を負った場合に後遺症が残ってしまうことがあります。
交通事故で傷害を負ってしまい、足首や膝、または股関節の動きが以前よりも悪くなった、という場合は下肢機能障害の疑いがあります。
下肢機能障害とは、下肢の三大関節である「股」「膝」「足首」の動きが制限された状態をいいます。
今回は、下肢機能障害の後遺障害等級認定について解説します。
可動域の測定方法について
下肢機能障害の後遺障害等級認定は、下肢関節の可動域が重要なポイントです。可動域がたった5度違うだけで認定される後遺障害等級が変わり、損害賠償金額が大きく変化することもあります。
比較対象は健側
下肢機能障害は健側(けんそく)といって、傷害を負っていない方の関節を基準として測定します。例えば右足の膝の動きが悪いなら、左足の膝が健側です。傷害を負っている方の関節は患側(かんそく)といいます。
健側と比較できない場合
もしも左右両方の関節を損傷した場合は、健側を基準にできませんから、「日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会」の定めた参考可動域角度と比較します。
測定方法
測定は原則として他動値で測定します。他動値とは、医師が手を添えて動かせるところまでを測った値です。これに対し、自分で動かせる範囲は自動値といいます。
後遺障害等級認定における下肢機能障害の測定方法は「日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会」の定めた「関節可動域表示ならびに測定法」によって行うこととされています。
ただし、他動値は、医師がどれくらいの力を加えて可動させるかによって、その値が異なることがありますが、本来は、痛み等を除去して可能な力を加えて可動しないところまで可動させて測定すべきではあります。
下肢機能障害が後遺障害として認定される条件とは
下肢機能障害が後遺障害として認定されるには、交通事故により器質的損傷(骨折・脱臼・腱や靭帯の損傷)を負ったと証明できなければいけません。また、その器質的損傷によって、可動域が狭くなるなどの後遺障害が生じていることについても証明が必要です。
そのため、下肢機能障害の後遺障害等級認定を適切に受けるために、交通事故後なるべく早くレントゲンやMRIなどの画像診断を受けることが重要です。
下肢機能障害の後遺障害等級
下肢機能障害の後遺障害等級は、第1級から第12級に認定される余地があります。
下肢機能障害で認められる可能性のある後遺障害等級
後遺障害等級 | 障害の程度 |
第1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
第5級7号 | 一下肢の用を全廃したもの |
第6級7号 | 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの |
第8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの |
第10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
また、下肢機能障害は、その症状の程度や可動域によって判定基準が細かく設定されています。
下肢機能障害の判定基準
後遺障害等級 | 部位 | 可動域など |
第1級 | 左右両方の下肢の3大関節(股・膝・足首)すべて | 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い(可動域10%以下)状態 |
上記に加え、足指の全てが強直した状態 | ||
第5級 | 左右どちらか一方の下肢の3大関節すべて | 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態 |
上記に加え、足指の全てが強直した状態 | ||
第6級 | 下肢の3大関節のうち、いずれか2つの関節 | 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態 |
関節の完全弛緩性麻痺(かんぜんちかんせいまひ)か、それに近い状態 | ||
人工関節・人工骨頭を置換した関節で可動域が1/2以下の状態 | ||
第8級 | 下肢の3大関節のうち、いずれか1つの関節 | 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態 |
関節の完全弛緩性麻痺(かんぜんちかんせいまひ)か、それに近い状態 | ||
常に硬性装具を必要とする動揺関節(安定していない関節) | ||
人工関節・人工骨頭を置換した関節で可動域が1/2以下の状態 | ||
第10級 | 関節の可動域が1/2以下の状態 | |
ときどき硬性装具を必要とする動揺関節 | ||
人工関節・人工骨頭を置換した関節 | ||
第12級 | 関節の可動域が3/4以下の状態 | |
重激な労働等の際に硬性補装具を必要とする動揺関節 | ||
習慣性脱臼(容易に脱臼していまう関節) |
関節の強直とは、軟骨の損傷や骨の癒着などにより、関節が動かなくなることをさします。
全く動かない状態を「完全強直」と言います。後遺障害等級では、可動域が10%以下の場合も完全強直に近い状態として、同様の等級が認定されます。
下肢機能障害が疑われる場合は弁護士に相談を
下肢機能障害は軽微なものであっても、日常生活や労働能力に支障をきたすものです。「安定した歩行ができない」「階段の上り下りに注意を要する」「杖や車いすを要する」ことなどによるストレスは、多大なものでしょう。
適切な後遺障害等級に認定され、必要相当額の損害賠償金を受け取るためにも、下肢機能障害の疑いのある方は一度専門家へ相談することをおすすめします。
当事務所では、下肢機能障害などの交通事故による後遺障害等級の認定をサポートします。