交通事故で目立つ場所にキズを負った場合(外貌醜状)

交通事故で顔や頭部などの人目に触れる場所にキズを負うと、精神的につらいことでしょう。職業によっては仕事に支障をきたすこともありますよね。
手足以外の日常的に人目につく部分に火傷あとやキズあとが残ってしまった状態を、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)といいます。

「外貌醜状による精神的苦痛に損害賠償金は支払われる?」「外貌醜状によって働けない場合の補償は?」「外貌醜状は後遺障害等級に認定されるの?」など、外見の変化による不安はつきないでしょう。

そこで今回は、外貌醜状の症状や、交通事故の被害で外貌醜状になってしまった場合の後遺障害等級などについて、解説します。

外貌醜状の症状と程度について

外貌醜状は身体の機能的には問題がなくとも、人目に触れる場所に傷あとが残ってしまっている状態です。傷あとがあることで身体の機能に影響がある場合には、運動機能障害などの、別の後遺障害になります。

外貌醜状の外貌は身体の中で手足以外の人目に触れる部位をさし、醜状は人目につく程度以上の傷あとや欠損のことです。「人目に付く以上」というのは、髪や眉で隠れる部分は含まれないということです。たとえ大きな傷跡が残っていても、頭髪などで隠れれば外貌醜状としては認められません。

手足に傷あとが残った場合は、外貌醜状ではありませんが、上肢や下肢の醜状障害として、それぞれ第12級から第14級の後遺障害等級に認定される可能性があります。

外貌醜状に男女の差はない

外貌醜状の障害認定では、男性よりも女性の方が醜状痕の影響が大きいとし、同じ醜状痕でも男性より女性の等級が高く認定されていました。しかし、男女差の解消のため、平成23年の改正により男性の等級が女性と同じ等級に引き上げられました。
そのため、現在では、同一の醜状痕であれば原則的には、男女を問わず同じ等級に認定されます。

手術跡も外貌醜状として認められる

外貌醜状の傷あとは、欠損、線状痕(せんじょうこん)、瘢痕(はんこん)などです。交通事故で傷害を負ったことで手術した際に線状痕などの傷あとが残った場合も該当します。

外貌醜状で逸失利益は認められるのか

外貌醜状で受け取れる可能性のある損害賠償金は、精神的な苦痛に対する慰謝料だけではありません。
外貌醜状は、その程度や大きさ、部位によっては職に就くことが難しいケースもあります。その場合は、逸失利益といって、事故で傷害を負わなければ得られていたであろう利益を請求できます。もっとも、多くの職業では外貌醜状による仕事への影響は少ないというのが、社会通念ではあります。

外貌醜状が労働能力の低下につながるかがポイント

外貌醜状による逸失利益は客観的な判断が難しく、保険会社や加害者側が、損害賠償請求に応じないケースもあります。
外見が重要となる一部の職業以外では、運動機能を失っていないことで労働に支障があると証明することが難しいからです。

このようなことからも、交通事故の被害者が外貌醜状となってしまった場合は、速やかに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

外貌醜状の後遺障害等級

外貌醜状の後遺障害等級は、第7級から第12級に認定される余地があります。

外貌醜状で認められる可能性のある後遺障害等級

後遺障害等級 障害の程度
第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
第12級14号 外貌に醜状を残すもの

また、外貌醜状の判定基準は細かく定められおり、傷あとの大きさや場所によっても異なる等級に認定されます。

外貌醜状の判定基準

後遺障害等級 傷あとの残った部位 傷あとの程度
第7級12号 頭 手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
頭蓋骨の手のひら大以上の欠損で、人目につく程度以上のもの
顔 鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
10円硬貨大以上の組織陥没で、人目につく程度以上のもの
首 手のひら大以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
第9級16号 顔 長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
第12級14号 頭 鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損で、人目につく程度以上のもの
顔 10円硬貨以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
長さ3センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
首 鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの

後遺障害等級 傷あとの残った部位 傷あとの程度
第7級12号 手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
頭蓋骨の手のひら大以上の欠損で、人目につく程度以上のもの
鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
10円硬貨大以上の組織陥没で、人目につく程度以上のもの
手のひら大以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
第9級16号 長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
第12級14号 鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損で、人目につく程度以上のもの
10円硬貨以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの
長さ3センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
鶏卵大面以上の瘢痕で、人目につく程度以上のもの

交通事故で外貌醜状になってしまった場合は弁護士に相談を

交通事故の被害者になってしまい、外貌醜状になると、その後の人生に大きな影響がでるでしょう。

また、外貌醜状は、人によっては耐えられないほどの精神的苦痛を感じます。
適切な後遺障害等級に認定され、必要で十分な損害賠償金を手に入れることで、外貌醜状による不安や精神的苦痛を少しでも和らげましょう。外部醜状にならなければ得られていたはずの利益を取り戻すことも重要です。

当事務所では交通事故被害者の方のお気持ちに寄り添い、外貌醜状などの精神的苦痛を伴う後遺障害の等級認定を積極的にサポートいたします。