一括払い請求とは
交通事故で怪我をされた場合の賠償責任保険としては、強制保険である自賠責保険と、任意保険があります。これらは、自賠責保険が最低限の費用を、任意保険がその上乗せ部分をカバーする関係にありますが、保険金の請求は、別の手続として行う必要があります。こうした中で、手続を簡易化するために一括払制度が実施されるようになりました。
一括払い請求は、通事故加害者の加入する任意保険の損害保険会社が、任意保険金を支払う際に自賠責保険からの保険料相当額を交通事故被害者に対し一括して支払い、後日、任意保険会社が自賠責保険に請求をするという制度です。
この制度により、交通事故被害者が入通院した医療機関が、診療費を、患者である交通事故被害者ではなく、交通事故加害者の任意保険会社に請求することで、交通事故被害者の手続を簡素化するというような形でも一般的に行われています。
なお、一括払いは、損害保険会社のサービスという位置づけで、損害保険会社が、過剰診療であると判断したり、すでに症状固定の時期であると考えたりしたような場合には、損害保険会社から、一括払いの支払いを打ち切られることもあります。この点について判例でも、「一括払いの合意は、医療機関に対し、損保会社への治療費支払請求権を課したものでもなく、損保会社に対し、医療機関への被害者の治療費一般の支払義務を課すものでもない」としています(大阪高等裁判所判決平成元年5月12日)。