交通事故の自賠責保険について
保険の種類
交通事故による損害を填補する保険は、おもに、
1.自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
2.任意保険)
3.人身傷害保険)
があります。
被害者の方は、交通事故による損害について、加害者の自賠責保険の保険会社及び任意保険の保険会社に請求できますし、 ご自身あるいはご家族などが人身傷害保険に加入しておられ、ご自身が当該人身保険の被保険者であれば、その人身傷害保険の保険会社に対しても、交通事故の損害に関する保険金請求ができます。
自賠責保険とは
自賠責保険は、交通事故のうち、人身事故に関するための保険です。よって、人身事故であっても物損部分については支払の対象ではありません。自賠責保険の支払の限度額は、被害者1名につき、
傷害の場合 | 120万円 |
---|---|
後遺障害の場合 | 4000万円 症状固定までの傷害部分については120万円 |
死亡の場合 | 3000万円 死亡に至るまでの傷害部分については120万円 |
となります。
傷害の場合の損害費目としては、
・治療費
・看護料
・通院費
・諸雑費(入院に関するもの)
・その他の費用(メガネ、義足代など)
・休業損害
・慰謝料
・文書料
がありますが、任意保険の基準額や裁判基準額より少額となります。
後遺障害は、等級認定がなされたら、下記の表に該当する金額が支払われます。
神経系統・精神・腹部臓器に著しい傷害を残して介護の必要な場合 | 1級 | 4,000万円 |
---|---|---|
2級 | 3,000万円 | |
上記以外 | 1級 | 3,000万円 |
2級 | 2,590万円 | |
3級 | 2,219万円 | |
4級 | 1,889万円 | |
5級 | 1,574万円 | |
6級 | 1,296万円 | |
7級 | 1,051万円 | |
8級 | 819万円 | |
9級 | 616万円 | |
10級 | 461万円 | |
11級 | 331万円 | |
12級 | 224万円 | |
13級 | 139万円 | |
14級 | 75万円 |
被害者が行う自賠責請求について
自賠責保険には、加害者が行う請求と被害者が行う請求がありますが、被害者請求は、加害者請求に優先されません。たとえば、加害者が被害者の治療費を150万円支払っている場合、被害者が傷害に関する被害者請求をしても、傷害の場合の限度額を加害者の支払額が超えるので、被害者が自賠責保険から直接保険金を受け取ることはできません。
請求に必要な書類
さて、自賠責保険の請求の方法ですが、請求には、
・自動車損害賠償責任保険支払請求書兼支払指図書
・印鑑登録証明書
・交通事故証明書(※)
・事故発生状況報告書
・診断書
・診療報酬明細書(※)
・(整骨院などに通院している場合は)施術証明書・施術費明細書(※)
・(あれば)通院交通費明細書
・(あれば)休業損害証明書
などが主に必要となります。
後遺障害に関する請求の場合は後遺障害診断書が、死亡に関する請求の場合には死亡診断書(死体検案書)や戸籍謄本などが必要となるなど、ケースバイケースで上記以外にも書類が必要となる場合がございます。(※)のものについては、被害者の方が原本をもっていなくても、加害者側の保険会社などが原本をもっていれば、被害者はその保険会社から原本照合がなされたコピーを入手して請求をすることが可能です。
請求後の流れ
自賠責保険会社は、請求書類が届いたら、損害保険料率算出機構に損害調査を依頼します。被害者請求から保険金受け取りまでの期間としては、早くて3週間、遅くて数か月かかることもあります。
自賠責保険における過失相殺
被害者に過失があった場合、自賠責保険金額は下記表の割合で減額されます。
減額適用上の被害者の |
減額割合 | |
後遺障害又は死亡に係るもの | 傷害に係るもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 |
3割減額 |
|
9割以上10割未満 |
5割減額 |
自賠責保険を受領したあとは・・・
加害者と示談する前に被害者請求にて自賠責保険金を受領した場合、加害者には総損害額から受領済の自賠責保険金額を差し引いた金額を請求することになりますが、このとき、自賠責保険金はまず遅延損害金から差し引くとする判例(最判平成16年12月20日)があるものの、通常、示談交渉の段階においてはこのようなやり方ではなく、総損害額から自賠責保険金を控除します。
詳細は、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。