損害論①・治療費

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも治療費について解説致します。
 

1 治療費の基準

治療費は、必要かつ相当な実費全額が損害として認められます。もっとも、治療の必要性及び相当性が争われる場合があります。例えば、軽症であるにもかかわらず、長期間、頻回に通院をしているといった場合には、治療費の一部について、損害と認められないことがあります。通院するに際しては、主治医とよく相談をし、主治医の医学的な判断に基づいて行うことが重要です。なお、整骨院等の施術費については、医師の指示に基づいて施術が行われた場合に限定されることが多いですので、整骨院等、医療機関以外で施術を受けられる場合には、まずは、主治医に相談をしてください。

 

2 症状固定後の治療費

治療費でよく問題になるのが、症状固定後の治療費です。症状固定後の治療費は、原則として損害として認められません。症状固定とは、治療しても症状が改善しない状態のことであり、従って症状固定後に治療をしても、無駄な費用の支出となり、加害者に負担させるのは不相当ということになります。しかし、症状固定後であっても症状の内容、程度、治療の内容により、症状の悪化を防ぐなどの必要があれば、損害として認められます。このような損害は、「症状固定後の治療費」というより「将来の治療費」として認められます。
 

3 判例

浦和地裁平成11年9月14日判決では、「原告の後遺障害による症状及び従前のその治療状況に照らせば、原告は、今後とも病院に一か月二回程度通院し、痛み止めや痙攣防止等のための投薬等の治療を受ける必要があると認められ、その期間は、今後五年間を下回らないものと認められる。そして、従前の病院における治療状況に鑑みれば、一か月当たり、治療費として七〇〇〇円、通院交通費として片道のタクシー代に相当する五〇〇〇円、通院付添費として六〇〇〇円を要すると認めるのが相当である。」と判示され、症状の内容、程度、治療の内容等を加味して、将来の治療費を認めています。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。