交通事故の被害と健康保険

今回は、交通事故の被害にあったときに、利用することが少なくない健康保険について解説致します。

1 健康保険とは

健康保険とは、公的医療保険の一つで、相互扶助の精神のもとに、被保険者から病気やけがに備えて収入に応じた保険料を徴収して、被保険者が医療を受けたときに、保険から医療機関に対して医療費を支払う仕組みです。日本では、全ての国民がいずれかの健康保険に加入する建前になっています(国民皆保険制度)。

2 健康保険と交通事故

交通事故の被害者となり、治療を受けるときに、医療機関から交通事故による傷病について健康保険を利用できないと説明される場合があります。しかし、厚生労働省から交通事故でも健康保険が使える旨の通達が出されているように(昭和43年通達第106号)、交通事故による傷病の治療でも、手続きを踏めば、健康保険を利用することはできるのが原則です。したがって、交通事故被害者の方が、以下のようなメリット・デメリットを踏まえた上で健康保険の利用を希望する場合には、健康保険を利用する旨をきちんと医療機関に申し出た上で、所定の手続をしてください。

3 健康保険を利用するメリット・デメリット 

健康保険を利用するメリットは、保険金の最終的な受領金額が多くなる場合があるということです。例えば、加害者が自賠責保険にしか加入しておらず治療費が高額になる場合や、被害者の方に過失がある場合には、保険金の最終的な受領金額が多くなる可能性が高いです。
一方で、健康保険を利用するデメリットは、下記の通り手続きが若干煩雑であること、健康保険を利用した治療は、治療内容、使用できる薬剤の種類・量、リハビリの回数等に制約があることなどです。

4 健康保険を利用する場合の手続き

健康保険を利用する場合には、第三者の行為による傷病届という書類を提出する必要があります。この書類は、所轄の全国健康保険協会の都道県支部又は健康保険組合に加入している場合は組合に、提出します。そのほか、国民健康保険に加入している場合は、住所地の市区町村の国民健康保険窓口に、提出します。その際、添付する資料としては、交通事故証明書、事故発生状況報告書、念書、同意書、損害賠償金納付確約書、負傷原因届などがあります。なお、損害賠償金納付確約書には加害者の署名捺印等が必要ですが、加害者の協力が得られない場合は、その事情を付記すれば加害者の署名捺印のないままで提出ができます。

5 最後に 

前述のように、交通事故の被害者となり、健康保険を利用する際には、メリット、デメリットがあります。弁護士にご相談いただければ、このようなメリット、デメリットを踏まえて、健康保険を利用するべきなのかをアドバイスさせていただきます。
 

大阪A&Mでは交通事故の被害者の方の相談をお待ちしています。