味覚障害で認められる後遺障害等級と認定のポイント

1 はじめに

交通事故の衝撃で、頭を強く打ち付けて脳や神経が損傷したり、舌が損傷したりすることで、味覚に異常が出ることがあります。食事は、人間らしい生活を送るうえで、毎日の営みの中で最も重要な要素です。

しかしながら、味覚に関し後遺障害が残存し、残りの人生において、味覚による人間らしい生活を送ることに支障が生じた場合には、やりきれない気持ちになりますし、食事をする度に事故に遭ったことのショックが蘇ることもあると思います。

そこで、本稿において、交通事故の衝撃で、味覚に後遺障害が残存したときに、事故の加害者に対して、どのような損害賠償請求が可能なのかにつき、ご紹介いたします。

2 味覚障害についての後遺障害等級について

味覚に関する後遺障害等級は、自賠法の後遺障害等級の別表の中には規定がありません。

しかしながら、①味覚がなくなった(味覚喪失)又は②味覚が一部なくなった(味覚減退)が認められる場合には、自賠責の後遺障害等級に相当する後遺障害が残存しているものと認定されます

①が認定される場合には、自賠責の後遺障害等級第12級相当が、②が認定される場合には自賠責の後遺障害等級第14級相当の後遺障害が残存していると認定されます。

ここで、①味覚喪失とは、ろ紙ディスク法による最高濃度液の検査により、基本4味質(甘味、塩味、酸味、苦味)がすべて認知できないものをいいます。

また、②味覚減退は、基本4味室のうち、1味質以上を認知できないものといいます。味覚障害の場合は、時の経過により、漸次回復する場合が多いため、等級の認定は原則として、症状固定したから6か月が経過してから行われます

3 味覚障害について後遺障害が認定された場合

自賠責の損害保険料率算定機構により、後遺障害等級が認定された場合、加害者に対する損害賠償請求の金額に大きな影響を与えます。

まず、後遺障害等級が認定された場合には、後遺障害等級が認定されるほどの怪我を負ったということに対し、後遺障害慰謝料という損害が認められます。後遺障害等級第12級が認定された場合には280万円が、後遺障害等級第14級が認定された場合には110万円が損害として認められます

したがって、味覚喪失の後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料として280万円が、味覚減退の後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料として110万円が認定されることになります。

次に、後遺障害等級が認定された場合には、後遺障害による逸失利益が問題となります後遺障害等級第12級相当が認定された場合には労働能力喪失率は14パーセント、他方、第14級相当が認定された場合には、労働能力喪失率は5パーセントが認められ、損害額に大きな違いがでます

しかしながら、後遺障害逸失利益は、労働能力の喪失を損害として把握するものですが、味覚障害の場合には、必ずしも労働能力に影響を与えるとは限りません。

そこで、裁判においては、仮に味覚障害の後遺障害が認定されたとしても、その等級に応じた労働能力の喪失が認定されないこともあります

したがって、味覚障害により、被害者の労働能力にどのような影響があるのか(味覚障害により減収が認められるのか等)を具体的に主張立証していくことになります。味覚障害により労働能力に影響がある職業としては、料理人が考えらえます。料理人によって、味覚が味付け等に重要な役割を有し、味覚に障害があると、飲食業の経営自体に大きな影響があることは明らかです。

また、他人のために料理を作る主婦業にも影響があると主張することも想定されます。

このように、味覚障害により労働能力が喪失していることが具体的に主張できる場合には、後遺障害による逸失利益を主張していくことが可能です。

他方、味覚障害により労働能力に影響が主張し難い場合には、逸失利益自体が否定される可能性は高いです。

したがって、味覚障害が労働能力にどのように影響があるのかを、具体的に主張していくことが、味覚障害の後遺障害逸失利益の損害を認定させるために重要なことだといえます。

4 最後に

以上では、味覚障害の場合に、後遺障害等級第12級相当が認定されるかについてご紹介しましたが、これらの問題以外にも被害者の方の個別事情に応じて、様々な検討を重ねて、後遺障害逸失利益等の損害額が算定されます。

当事務所には、医師としての経験が豊富な弁護士がおり、後遺障害に関する知識が豊富です。

さらに、弁護士にご依頼いただいた場合、加害者加入の保険会社との交渉や訴訟提起等一切を引きうけ、当該事故の具体的な態様を踏まえ、適切な後遺障害逸失利益を請求することができます。交通事故の被害に遭われたら、まずは、弁護士にご相談ください。