交通事故による障害について器質的損傷なく高次脳機能障害を否定し9級相当とした裁判例(東京高等裁判所平成26年7月24日)
交通事故と高次脳機能障害
交通事故により脳外傷を負ったことにより高次脳機能障害となることがありますが、時には、本裁判例の様にその立証が難しいことがあります。高次脳機能障害の特徴としては、認知障害、行動障害、人格変化といった典型的な症状があげられますが、自賠責保険上の後遺障害等級認定においては、びまん性脳損傷などの脳損傷が、MRIなどの画像検査所見の有無が判断資料として重視されます。本裁判例(東京高等裁判所平成26年7月24日)は、脳の器質的損傷を裏付ける画像所見がないということで、高次脳機能障害が否認されています。
交通事故による障害について器質的損傷なく高次脳機能障害を否定し9級相当とした裁判例(東京高等裁判所平成26年7月24日)
本裁判例(東京高等裁判所平成26年7月24日)では、「高次脳機能障害の判断要素として、意識障害のほか「画像資料上で外傷後ほぼ3か月以内に完成するびまん性脳室拡大・脳萎縮の所見」が挙げられ、脳室拡大・脳萎縮の有無や程度を把握することが重要である」とした上で、原告に、救急隊到着時、初診病院等で意識障害がなく、画像上も本件交通事故の外傷による高次脳機能障害を示すような脳の器質的損傷の存在を合理的裏付ける所見があるとは認められないとし、高次脳機能障害を否定しました。
まとめ
交通事故で高次脳機能障害となった場合、ご本人やご家族の心労は相当なものとなります。しかし、自賠責保険上の後遺障害等級認定や裁判例で、高次脳機能障害と認められないケースも多くあります。また、当初の後遺障害等級認定で高次脳機能障害が否定された場合に、異議申立で覆すのは容易ではありません。したがいまして、交通事故により高次脳機能障害となったことが疑われる場合には、交通事故後できるだけ早期に、交通事故、特に高次脳機能障害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。