交通事故によるむちうち損傷に被害者の心因的要因を認めた裁判例(岡山地方裁判所平成26年5月15日)
交通事故によるむちうち損傷に被害者の心因的要因
交通事故によりむちうち損傷(頚椎捻挫)を受傷した被害者の一般的経過としては、軽い場合は交通事故後数週間で症状が軽快しますし、症状が比較的重い方でも、3か月から6か月程度で症状が軽快するとされており、交通事故から3から6か月程度経過すると、相手方損害保険会社から、そろそろ症状固定だといって、治療費の立替払いを打ち切られることが少なくありません。他方、交通事故から6か月以上が経過しても、症状が軽快せず、頚部痛などに苦しんでいる被害者の方が一定割合いらっしゃいます。そして、症状が長期化する原因の一つとして、心因的要因の影響があるといわれておりますが、本裁判例では、この点について認定をしています。
交通事故によるむちうち損傷に被害者の心因的要因を認めた裁判例(岡山地方裁判所平成26年5月15日)
本裁判例(岡山地方裁判所平成26年5月15日)は、交通事故で頸椎捻挫等と診断された21歳女性について、「むち打ち損傷による自覚症状の発生及び増悪に、被害者の心因的要因が影響することは医学的にも争いがないところ、原告には、本件交通事故後、役18日後にうつ状態が認められており、デパス錠、ルボックス錠が投与されたが、症状は改善せず、本件交通事故後から約10か月後には更にパキシル錠が追加投与されているのであり、この間、原告においても、●病院心療内科に通院していたことからすると、心因的な要素が、原告の自覚症状の発現及び継続に寄与しているということができる。本件交通事故前に原告に心因的障害が生じていたとは認められないことからすると、原告のこれらの症状は、本件交通事故を契機として発現したものとして相当因果関係が認められる。」としました。
まとめ
交通事故でむちうち損傷(頚椎捻挫)を受傷した方の疼痛等の症状が長期間持続する原因の一つとして心因的な要因があると考えられていますが、損害賠償において、これをきちっと認定してもらうためには、交通事故後ある程度早いタイミングで、精神科医の診察を受けておくことが必要となることもあります。