交通事故被害者に日本版CRPS判定指標を用い12級13号を認定した裁判例(京都地裁平成26年5月20日判決)」
前回のコラムに続き、交通事故後に、CRPS(複合性局所疼痛症候群)と診断され、後遺障害が残存している交通事故被害者についての裁判例です。前回のコラムでは、CRPSの国際疼痛学会の診断基準を紹介しましたが、本裁判例では、日本版CRPS判定指標を用い、これを満たすとして、後遺障害等級12級13号を認定しております。
以下、日本版CRPS判定指標(臨床用)を紹介します。
A 病気のいずれかの時期に、以下の自覚症状のうち2項目以上該当すること
※ただし、それぞれの項目内のいずれかの症状を満たせばよい。
1. 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
2. 関節可動域制限
3. 持続性ないしは不釣合いな痛み,しびれたような針で刺すような痛み(患者が自発的に述べる),知覚過敏
4. 発汗の亢進ないしは低下
5. 浮腫
B 診察時において,以下の他覚所見の項目を2 項目以上該当すること
1. 皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
2. 関節可動域制限
3. アロディニア(触刺激ないしは熱刺激による)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
4. 発汗の亢進ないしは低下
5. 浮腫
判例
本裁判例は、自動二輪車を運転していたXと乗用車との交通事故で、右膝にCRPSによる労災後遺障害等級9級、左上肢等に自賠責後遺障害等級12級13号の後遺障害を残したとして損害賠償を求めて訴訟提起したものです。
本裁判例では、Xの訴える右膝等の疼痛は、「客観的かつ厳格な要件が設定されている自賠法施行令上の後遺障害であるCRPSとは認められない」としましたが、疼痛は、「Xが事故直後から一貫して強く訴えていた症状であり、日本版CRPS判定指標は満たす旨の専門的知見」もあったことなどから、自賠責後遺障害等級12級13号に該当すると認めております。
CRPSの診断基準は複数ありますし、本裁判例の様に、自賠責の基準には当てはまらなくとも、専門的知見があれば、CRPSとして後遺障害が認定されることもありますので、CRPSやRSDの診断を受けた場合には、早めに、交通事故や医療に詳しい弁護士に相談をすることも大切です。