交通事故の「慰謝料」
慰謝料とは
交通事故の被害者は、交通事故による精神的・肉体的な苦痛について、加害者などに慰謝料を請求することができます。
交通事故に関する慰謝料は、
・入通院慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
の3つに大別されます。
入通院慰謝料について
入通院慰謝料は、交通事故による受傷について治療を受けるために入通院した場合に請求できる慰謝料です。
後遺障害が残った場合でも、症状固定までに入通院していればその部分に対して入通院慰謝料が請求できますし、お亡くなりになった場合も、交通事故発生から死亡に至るまでに交通事故に起因する傷病の治療を受けている場合はその部分については入通院慰謝料が請求できます。
現在、関西(大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山・滋賀)などでは、被害者側の弁護士らはおおむね大阪地方裁判所の算定基準(※1)に基づいて請求しています。
((※1)・・・自賠責保険や任意保険会社内部の基準とは異なるもので、高額なものです。)
ただし、被害者の方それぞれの事情が考慮され、慰謝料額が増額ないし減額されることもあります。
たとえば、被害者が小さな子供を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には増額が検討されたり、入院する必要が乏しいのに被害者本人の希望で入院している場合は減額が考慮されたりします。また、軽度の神経症状の入通院慰謝料は、通常の慰謝料の3分の2程度とされるのが通常です。
後遺障害慰謝料について
後遺障害が残り等級認定を受けた場合などは、ご自身の状況に相当する後遺障害慰謝料を請求することができます。こちらも、前述のように算定基準があり、個々の事情によって慰謝料額が増減されることがあります。少し具体的な判例をご紹介しましょう。
■仕事への影響が考慮されたケース
・32歳の女性ピアノ講師の後遺障害(頸部捻挫、頸椎不安定症、右尺骨神経麻痺、後遺障害等級は14級10号)につき、ピアノ講師への復職が非常に困難であること、月経異常及び無排卵症の症状が残存していることなどを考慮し1000万円の慰謝料を認めた(神戸地判平成12年11月20日)
■親族固有の慰謝料が認定されたケース
・17歳の高校3年生男子の後遺障害(高次脳機能障害、将来にわたって食事や入浴等の随時の介護や外出時等の一定の行動時の監視や声掛けが必要、後遺障害等級は別表第1(※2)2級1号)につき、父母兄弟を含め後遺障害慰謝料3140万円を認めた(福岡地判平成22年7月15日)
((※2)・・・神経系統・精神・腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合の表をさします)
死亡慰謝料について
死亡慰謝料は、交通事故によって被害者が死亡した場合(交通死亡事故)に請求できるものです。
死亡慰謝料には、被害者ご本人の慰謝料と近親者(遺族など)の慰謝料がございます。
近親者固有の慰謝料については原則として民法上規定された親族に認められるのですが、兄弟姉妹等にも認められる裁判例は相当数あり、内縁の妻や内縁の夫にも認められる例もございます。慰謝料額の算定については、やはりこちらも基準があるのですが、加害者が飲酒運転や殊更な信号無視等をしている場合は増額が、相続人が被害者と疎遠であった場合は減額が考慮されます。
(※ なお、物損の場合、慰謝料は認められません。)
詳細は、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。